偽りのシステム115


 先鋒の〝化け物〟部隊が、ゲッスンの谷の手前十五キロメートルに差し掛かる頃、彼らのセンサーに反応があった。反乱軍迎撃部隊である。

「蹴散らせ!! 生身の奇人たちを一人残らず掃討するのだ!!」

 〝十八番おはこ〟の兵士たちの補助脳に、エリケンの声が木霊する。彼らは一斉に誘導型ミサイルを打ち放った。それらは山吹色の閃光を伴い、一斉に闇夜の空間に幾重もの直線を描き出す。

 それらの先は着弾と同時に、ドーム状の光に変化し、爆風と共に巨木に阻まれた峡谷を火の海に変えて行った。

「数を減らせ!! 極力敵機の数を減らしまくるんだ!! 奴らの主戦力はフェイズウォーカーである。それさえ殲滅すれば、奴らは自ずと機能不全になる!! いち早く奴らの壁に風穴を開けるのだ!!」

 アルティメットサイバーシステムを使用した特殊飛空部隊は、ミサイルを打つ放つと、皆一様に木の葉をひるがえすがごとく大きく後方宙返りを繰り返し、そしてまた弾倉にミサイルを押し込むと、再び山吹色の閃光を放つのである。

 しかし、反乱軍側も負けてはいなかった。反乱軍の防衛に配置されたフェイズウォーカーは、峡谷を所狭しと縦横無尽の動きを見せ、十八番の部隊が撃ち放ったミサイルを四方から撃墜して行くのである。

「なんて手慣れた連中なんだ……! 俺たちの部隊の練度とも引けを取らんとは!? しかし、それも予測のうち。ならば、各自散開!! シミュレーション通り、即座にD2フォーメーションの陣形に切り替え敵を掃討しろ!!」

 エリケンは、即座にネットワークを通じ全兵士に指示を出した。

 D2フォーメーションとは、今まで組んでいた編隊をこの時点で縦割りに再構築させる隠語である。彼らの補助脳には、補助的なコミュニケータープログラムが存在するため、それまで培ってきた編隊の練度を維持したまま、それらの特徴を活かし編隊を効率的に運用することが出来るのである。

「D2フォーメーションプログラム発動!! 反乱軍の動きが一時的に止まりました!!」


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