偽りのシステム116


 オペレーターに状況を報告されると、

「よし、そのままの陣形で攻め入れさせろ!! さすがの反乱軍もこうなれば動揺を隠せまい!!」

 エリケンは、ほくそ笑んだ。どんなに優秀な戦略家であろうとも、いきなり編隊を変えられれば対処に困惑するのも当然である。それを対人に例えるなら、今まで物静かで優しかった人物が、突如として口汚く暴力的な性格に変貌してしまうぐらい大変なものである。

 しかし、それが出来るのも、彼ら身体の半分近くを機械に換装してしまった第十八特殊任務大隊の特権である。生身の人間には、一瞬で編隊の内容を変えてしまうことなど出来ないのだ。

 動きの鈍くなった反乱軍の迎撃部隊に、もはや先ほどまでの精彩な動きは見られなかった。いきなり〝羽虫〟と〝ムカデ〟と〝ケンタウロス〟が個々に編隊を組みなおし、その背後から重火器装備の車両型化け物が砲撃を食らわして来るのである。

 そして、そのフォーメーションの対処に慣れた頃になると、

「各機、D2フォーメーションからD1フォーメーションへと移行!!」

 エリケンの指示によって元の重層的な陣形に戻し、一点突破に有利な集中砲火を浴びせるのである。

 これによって、反乱軍の迎撃部隊の半数が壊滅した。反乱軍側は、迎撃の前方に機動近接戦闘に有利な白蓮改を多数配置し、十八番の化け物兵士たちをかく乱する戦術を取ったが、こうも編隊をころころと変えられては対処のしようがなかった。つまり、これこそがエリケンら第十八特殊任務大隊の狙いなのである。

「アッハッハッハ! さすがのヴェルデムンドの背骨折りでも、玉袋が縮み込む思いだろう!! どうだ、これが俺たちのした戦い方だ!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る