偽りのシステム95


 それまで、無敵の戦果を誇る第十八特殊任務大隊であっただけに、エリケンのその驚愕たる思いや尋常なるものではない。

「な、何だと言うんだ、エスタ坊や!? こいつは……いや、こいつらの正体は一体!?」

「はい、これは噂に聞く、あの〝ヴェルデムンドの背骨折り〟が搭乗する機体であり、この一味は、その背骨折りが率いる四機の機影かと……」

「〝ヴェルデムンドの背骨折り〟だと? このゲッスンの谷を攻略した立役者とされる男の……? あの存在は、反乱軍の指揮を上げるための、ただの噂話ではなかったのか!?」

「え、ええ……。そして、今の映像に出て来た黒く不気味な機体は、つい先だっての作戦から配備された最新鋭の高速機動型試作機〝烈風七型〟であると報告されております……」

「高速機動型烈風七型とな……。ううむ、烈風シリーズの存在も噂には聞いていたが、つまり、奴は一式重工との繋がりがあるということなのか?」

「にわかには信じがたい事ではありますが、どうやらそのようであります」

「ううむ……。自立思考型人工知能の完全形態を目指した烈風シリーズ……。まるで都市伝説のような噂でしかなかったものが、こうして現実に……」

「エリケン大佐殿。それは考えられる話です。人は、木を見て森を見ずを繰り返す動物です。そして、木を隠すなら森の中……。情報というものは、この目で見るまでは確実性を帯びません」

「つまり、一色重工は、わざとその存在をあやふやなものとするために、まるでフィクションのような噂を巷にばら撒いて制作に当たっていたと言うのだな、エスタ坊や?」

「いかにも、その通りであると私は考えます。そして、その機体をいとも容易に操るこの男こそ、〝ヴェルデムンドの背骨折り〟こと、羽間正太郎であると推測します」

「ヴェルデムンドの背骨折り……。羽間正太郎……。この野蛮極まりない弱肉強食の世界で、生身の生き方を貫き通そうとする極めて勇敢な大変人か……」

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