偽りのシステム㊾


 ※※※


「大変よ、ショウタロウ・ハザマ!! あなたの本体が隠されている場所に、何者かがアクセスを試みようとしているわ!!」

 歩きながらエナ・リックバルトは、その脳裏に危機的な予兆を感じ取った。

「な、何っ!? エナ、それはどういうことだ!? 俺の身体のある場所が特定できたのか!?」

「い、いえ……そうじゃない。だけど、なぜかあたしにはそれが分かった。だって、あたしにもあなたの身体の居場所なんて特定できなかったもの」

「じゃ、じゃあ、何で分かった? 何で急にそんなことが……」

 言われてエナは、もう一度自身の脳裏に問い掛けてみた。すると、

「こ、これは……誰かがあたしにアクセスして来たとでも言うの?」

 エナは。信じられないと言った表情のままその場に立ち止まった。

「お前自身にアクセスして来ただと? まさかそいつが……」

「だけど、考えられることはそれだけだわ。陰であたしたちの行動を監視している誰かが居る」

「罠だとは考えられないか? グリゴリとかのよ」

「そうね、それも考えられるわ。だけど、これを見て」

 言ってエナは、小さな手のひらを宙にかざすと、そこに脳裏に送られて来た映像を投影させた。

「こ、こりゃあ……」

 そこには、全身丸裸のままカプセルに閉じ込められた液体付けの正太郎の肉体があった。

 エナは、少し目を細めて頬を染めながら、

「あ、あの……ちょっと、子供のあたしには刺激が強いんだけど……これって、あなたの本当の肉体よね?」

「ああ、そのようだ。ちょうど右足の付け根とか左腕の二の腕辺りとか、わずかばかりだが、あん時の手術の跡が残っている」

「ゲオルグ博士に施してもらった再生手術のことね」

「ああ。確かに手術は完璧だったが、細胞の経年的な融合は未だ完璧じゃない。これはその跡だ」

「ということは、これはあなたで間違いないってことね?」

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