偽りのシステム㊿


「ああ、百パーセントそうであるとは言い切れねえが、多分そうだろう。やったな、エナ」

 正太郎は、エナに微笑みかけるが、

「いいえ、そうじゃない。これはあたしの成果なんかじゃない。この情報をどこからか送って来た誰かのお陰よ」

 エナは、強く首を振って否定した。全く身に覚えのない力に、彼女は気味の悪さを感じたのだ。

「誰かって誰だ、エナ!? 何か思い当たる節はあるのか?」

「そ、そんなの、あたしにだって分かるわけないわ! あたしは生きるために肉体を捨てたわ! あたしは、そんな選択肢しか持たないただ一人のか弱い女の子なのよ。そんなに魔法みたいに何でもかんでも出来るわけじゃない!」 

 これまで、この仮想世界でさまざまな奇跡を繰り返してきた彼女ですら、この力は脅威だった。それだけ仮想世界は有限無限なのだ。

「しかしよ、エナ。とどのつまり、俺の本体はどこにあるんだ? ここまで情報が鮮明ならば、俺の身体のある場所も大体は掴めているんだろ?」

「え、ええ……。でも」

「でも? 何だ、早く言ってくれ」

「ええ……あたしね。やっぱり感じるのよ。これは因縁よ」

「因縁だと? 随分らしくねえこと言うじゃねえか」

 言われてエナは、とても言い表せないぐらいの微妙な表情で、

「あなたの本体のある場所は、あの場所……第十五寄留のあった場所、ブラフマデージャよ」

「ブ、ブラフマデージャだと……!?」


 ※※※


「まだ〝ヴェルデムンドの背骨折り〟の居場所は掴めんのか!? 奴の居場所を特定出来た者には、一生家族を養っているだけの金一封を授ける!! 奴の命をこの世界から葬り去ることが出来た者には、永遠の命を授ける!! それで足りなくば、あの空に浮かぶ星を一つ授けよう!! 何が不服か!? 何が不満か!? これだけの報奨を貴様ら愚民どもに授けようというのに、なぜに奴を探し出せん!? 本当に貴様らと言う奴らは無能の塊だな!! 愚弄の民々だな!!」



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