偽りのシステム⑦


「そうね。あたしにも、どうもそれが引っかかっているの。ねえ、覚えてる、ショウタロウ・ハザマ? グリゴリが初めて五年前の戦乱であなたと対峙した時のこと?」

「ああ、そりゃあ覚えてるさ。あん時は、色々と厄介ごとを抱えながら、命からがら頑張ったもんさ」

「そう、そしてあなたはグリゴリの執拗な攻撃に耐えながらも、何とか勝利を勝ち取り、作戦をほぼ完璧に遂行させることが出来た。あたしはあなたの敵の立場に居ながら、あなたに格別の興味を抱いてしまったことで、あたしは育ての親代わりだったグリゴリに焼きもちを焼かれて……。そのせいで、あたしは彼の狂気によって肉体を乗っ取られてしまった……」

「ああ、そうだったな。よく覚えてるさ。あれからというもの、グリゴリの野郎は、この俺に勝てなかったってもんで、俺をとことん憎んだんだ。その上、実の娘のように可愛がっていたお前を取られてしまったと思い込んで暴走したんだっけな」

「ええ、そう。あの時なの、あたしが始祖ペルゼデールの声を聞いたのは……。完全に意識が三次元ネットワーク上に取り込まれてしまった時にね、あたしはその他の大型人工知能たちまでも始祖ペルゼデールと呼ばれるシステムの意思に毒されてしまった……。いえ、毒されたと言うよりも、あたしたちが知る由もない現実をいきなり突きつけられて、驚いちゃったんだと思うわ」

「そりゃ、お前みてえな、頭の良いやつならではだな。なまじ、その始祖ペルゼデールとかいう厄介者の理屈が理解出来たゆえに、そうやって悩まなきゃいけねえってのが道理さ。そんじょそこいらのパンピーに、どんなに言い聞かせたからって、そうやって悩んだり驚いたりは出来ねえって寸法だ」

「うん、もうっ! そういう言い方ってなんか引っ掛かるわね。あんまり褒められた気分じゃないわ」

「勘違いすんなよ、エナ。これは褒めてるとか貶しているとか言う問題じゃねえんだ。人間にはそれぞれの役割ってのがあるもんだ。そう言やあ、お前。ついこの間まで、この俺を〝インターフェイサー〟だとか名付けて役割論なんぞ語ってたじゃねえか。まあ、それがそういうことなんだよ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る