偽りのシステム④


「光明だと!? して、それは何と言って来ておる!?」

 眉間にしわを寄せ、悪鬼のごとき形相で側近を見下ろすシュンマッハ。

「は、はあ……申し上げまする。これと言ってあちら側の特使が直接こちら側に参って来たわけでないのですが、それとなる声明を我が司令部に打診して来た次第で御座います」

「打診だと? それで、向こう側はなんと申してきておるのだ、はよう言え!!」

「はい、申し上げます。あちら側……浮遊戦艦側は、交渉を望む、と」

「こ、交渉だと……?」

「え、ええ……」

 意外な答えであった。本来、交渉とは立場が優位に立つものから行うものではない。交渉を申し出た側にとって何らかのメリットが無ければ意味の無い事だとシュンマッハは考えていた。

(なるほど……。ということは、あの浮遊戦艦というものは、思ったよりガタイが大きいだけのなのかもしれん。こちら側を力でねじ伏せるだけの力がありながら、それをしないと言うのは、まさにその証左。奴らを利用し、その技術を奪い取れば、あの恨めしい地球に住む者たちに一泡吹かすことも可能かもしれん。ふっふっふ、これで俺の運も向いて来たというものだ)

 シュンマッハという名は偽名である。彼は、地球上では卑しいとされる家系に生まれ出て、それ以来厳しい境遇に耐え生きて来たのだ。

 しかし、その卑しいとされる家系の根拠などどこにも存在しない。ただ存在するのは、そういった境遇によって生み出された他人への憎しみの積み重なりが、こういった考えに至っているという事実なのである。

「閣下。ご決断を……」

「よし、浮遊戦艦との交渉はこの俺が直々に出向こう。貴様たちはこの俺が戻るまでここで待機するのだ。歓迎の宴の用意を怠るな!」


 ※※※

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