偽りのシステム⑤


 ※※※


 グリゴリの罠に嵌まり、仮想空間に囚われた正太郎は、自分の本体を探し彷徨さまよっていた。

 傍らにエナ・リックバルトがいるお陰で、現実世界の状況を把握することが出来たが、逆にそれだけ彼の焦燥が増して来る。

「クソッ……。俺がここに眠らされている間に、世界は別の方向を向いちまった。確かに俺一人が居たってどうこう出来る事態じゃねえが、少なくとも何かは出来たはずだ。全くもって情けねえ話だぜ……」

 正太郎は、無限に広がりを見せる仮想空間に手を突きうな垂れる。

「仕方がないわ。それがグリゴリの狙いだったんだもの。それに、あなたが現実世界に居なければ都合が良いと思うのはグリゴリだけじゃない。きっと、始祖ペルゼデールも同じだと思うの」

 エナは、落ち込む彼の背中にそっと手を差し伸べた。

「なるほど、始祖ペルゼデールか。さっきお前が話してくれた始祖ペルゼデールの正体。それは本当なんだな?」

「ええ、信じられないかもしれないけど、一言で言えば始祖ペルゼデールはこの世を管理運営するシステム……神という概念にも似ているわ」

「神……か。俺ァ、そんなものあっても無くてもどっちでも良いと思っていたが、あればあったで厄介なものなんだな。しかも、俺たち人間に味方してくれているわけでもないんだからな」

「そうね。あたしがこの浮遊戦艦の中にあるデータベースから引き出した情報によれば、このシステムは遥か宇宙の起源の近くにまでさかのぼるらしいわ。きっと別宇宙の誰かが、何らかの意図をもって干渉するために仕込んだものだと考えられるわ」

「別宇宙の、か。なるほどな。こりゃあ、俺たちの国で常食にしている味噌や醤油の仕込みと全く変わらねえって話だ」




 

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