偽りのシステム③


 無残にも、側近の首が崩れた巌のように壇上からゴロゴロと転げ落ちて行く。

 その場に一様に立ち並んだ他の者たちは、同時にしかめ面をしながら目を背けた。

 この政権が樹立して以来、こんな光景を目の当たりにするのも珍しい事ではない。かのアンドロイド女王がこの国を治めていた時代には、全くもって絶対に想像し得なかったことである。

「貴様たちは無能の集まりか!? これだけ雁首揃えて、どんな仕事をして来たと言うのだ!! この国の官僚は、余程のエリートの集まりと聞いておったが、あきれてものが言えんわ!! どうして大型人工知能が自分で考えろなどと申すか!? これではまるで、この俺が愚弄されているみたいではないか!!」

 言い得て然りである。

 だが、シュンマッハは血を吹き出し横たわる側近の姿などには目もくれず、そのまま烈火のごとく猛り狂って暴れ回った。玉座の周囲にまとわりつく愛妾たちを蹴る殴るして怒りの矛先を彼女たちにぶつけまくる。人を人とも思わぬ所業。これこそが現政権を勝ち得た彼の野蛮の真骨頂なのだ。

 狂った者に怯え、他の者は無理にでも委縮せざるを得なかった。人の心を持った人々には、家族があり友人もいる。ひとたび彼の逆鱗に触れれば、当の本人だけでなく、それにまつわる家系すら根絶やしにされてしまう。それにまつわる友人知人ですら現地位を剥奪されてしまう。

 そんな雁字搦めの人間関係の人質があるからこそ、彼ら側近の者たちも手が出せないのだ。

「ええい、馬鹿につける薬はこの世に無いと昔から言うぞ! しかして、それは全くもって自明の理というところだな。これだけの人間がこの場に居ながら、何の解決すら誰も思い浮かばぬとは何とも無能な連中よ……!! 貴様らは、高い給料をこの俺様から頂いておきながら、この体たらくとは情けないものだぞ!! だれぞ、体を張ってでも、あの浮遊戦艦のところに出向いて交渉をしてみせい!!」

 無茶苦茶とはこれを言う。自らのことは差し置いてでも、自分以外の者に要求だけはする。それがシュンマッハである。

 その時、別の側近が慌てて詰め寄り、

「閣下!! シュ、シュンマッハ様!! 何卒、お気を静かになされまし! たった今、浮遊戦艦側から打診が入りました模様です! これは一つの光明かも知れませぬ!!」


 


 

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