偽りのシステム②

 

 シュンマッハにとって、この国の政治の中身、民衆の幸せ、そしてこの国の行く末などどうでもよかった。あるのは、彼当人の自己顕示欲のみ。彼の自己顕示の行き所が満たされればそれで満足なのである。

(俺は天才だ……。この世界に生きる生きとし生ける者の中でかなり秀でた天才だ。天才であるこの俺の存在は、この玉座があってこそ保たれる。民衆のような虫けらどもにせよ、ここに居るエリート面したボンクラどもにせよ、この天才たる俺の存在と比べれば、何の価値もないゴミクズのようなもの。俺さえ生き残り、この俺の遺伝子さえ継がすことが出来れば、人類はすべて安泰なのだ……)

 これが彼の信念であり、彼の価値観の土台なのである。まるで冗談のようにも聞こえるが、彼は心底そう思って生きて来たのだ。

「閣下! シュンマッハ閣下! 大変で御座います!」

 側近の一人が、慌てて駆け寄り、腰を落として丁重に玉座の前にひざまずくと、

「何事だ? 早く申せ! して、何と回答が出た!? あの浮遊戦艦の対処法とは!?」

 シュンマッハは、玉座に張り付いたまま口角から飛沫をばら撒いた。

「そ、それが……」

「それが、何だ!? はよ申せ」

「え、ええ……。それが、新型大型人工知能〝ヴァハグン〟に問い掛けましたところ……」

「ええい、何だ!? はよう申せと言っておろう、この愚図めが!! 貴様、即刻首をはねられたいか!?」

 シュンマッハは、凄まじい剣幕でまくしたてた。瞬時、腰に携えたレーザーソードを抜き取って側近の首筋を煽り立てる。

「へ、へへえ!! そんなご無体をなされなくとも……!! も、申し上げまする!! じ、実は、大型人工知能〝ヴァハグン〟が導き出した答えと言うのが……」

「言うのが!?」

「〝think by yourself〟……。自分で考えろ……と」

 言われてシュンマッハは顔を真っ赤にして怒り狂い、

「な、なんだと!? こ、この大馬鹿者!!」

 と言った途端、目前の側近の首を喉元から撥ね飛ばしてしまったのだ。

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