第十八章【偽りのシステム】

偽りのシステム①


 

 第十八章【偽りのシステム】



 旧ペルゼデールネイションの首都、第二寄留ノイマンブリッジ上空に現れた浮遊戦艦は、寄留全体を覆い尽くすほど見事に巨大であった。

 三次元ネットワークと呼ばれる神経系をつないだモジュールが示す感覚でしか見たことがない彼らにとって、この実体験はまさに脅威である。

「こんなものが、本当に宙に浮いているだなんて……」

「大きいものだとは聞いていたが、こんな技術を持った相手に我々が戦って敵うはずがない……」

「一体、シュンマッハさまはどうお考えになっていることやら……」

 住民の動揺は幾何いくばくのものか計り知れたものではない。

 しかも、この五角形の平型タイプは、今までのデータベースにすら記載されていない新型である。こんな物を目の当たりにして、動揺を見せない者などいないわけがない。

「シュンマッハ様、いかがいたしましょう! あのような物が現れましては、とても我々の戦力では太刀打ちできません!!」

 彼の側近の者たちの動揺も計り知れない。この状況は、ぐらぐらと煮えたぎったやかんを目の前にした蟻の巣同然だからである。

「ええい、慌てるな! 何を考えているのだ、貴様たち! こんな時の為に大型人工知能があるのではないか!? つべこべ能書きを垂れて狼狽うろたえる前に、さっさとこの状況の対処法を問い合わせぬか!!」

 シュンマッハは一同を恫喝した。玉座に鎮座したまま大声を張り上げるその姿は、一目して堂々たるものであったが、実のところは一生に一度あるか無いかの焦燥によって足腰の自由が利かないのだ。

(ようやく手に入れたこの地位を、むざむざ他の者に明け渡してたまるか! この地位を明け渡すぐらいだったら、ここで野垂れ死にした方がマシだ……)

 それでも彼は麾下の者たちに動揺を見せまいとした。これは彼の上に立つものとしての心構えから来ているものではない。彼は、あくまで玉座に座り続けていることに固執したかったのだ。

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