浮遊戦艦の中で365


 一人の虹色の人類が大膳の前にかしづく。

「何だと!? あの浮遊戦艦がか!? なぜ浮遊戦艦がシュンマッハのところへ!?」

 大膳は、言われて蒼白になった。かなり予想外の出来事であったからだ。

「浮遊戦艦? それは何なのです、ダイゼン・ナルコザワ」

 その存在を知らぬジェリー・アトキンスは、純粋に問い掛ける。

 そこにリゲルデが割って入り、

「浮遊戦艦とはな、ここ近年に現れるようになった、デカいものならば四方三キロメートルにも及ぶ巨大な飛行物体のことだ。奴が現れるところ、人が山のように居なくなる。つまり、あの中には、俺たち人類のサンプルがたくさん詰まっているということだ」

「何ですって!? それじゃあ、その浮遊戦艦というものは、旧ペルゼデールネイションの人々をごっそり奪い去る作戦に出たと……?」

 言われて大膳は、低い唸り声を上げながら、

「ううむ、そうとも限らんよ。……というのも、今まで浮遊戦艦というのは、誰かに成りすましたプロパガンダを使って言葉巧みに人をさらって行った。しかし、その大半はネイチャーたる〝自然派〟が住まう地域が主だったものだ」

「なるほど。それなのに、旧ペルゼデールネイション国家と言えば、どちらの主義主張の人々も受け入れている自由に満ちた国だ。そんな国民が集う場所に足を踏み入れたということは……」

「浮遊戦艦側も、次の段階に足を踏み入れたと思うべきか……」

 二人が妙に納得し合うのを見て、

「あ、あのダイゼン・ナルコザワ。そもそも、その浮遊戦艦というのは、どういった存在なのです? そうおっしゃるからには、こちらの虹色の人類側の存在とは別の側のものとお見受けしますが」

 言われて、大膳はハッと我に返った。長年眠らされていたジェリーに、その背景を知る由もない。

「うむ、ならば教えよう。浮遊戦艦とはな、先ほど申した始祖ペルゼデールというシステムが作り出した過干渉の成れの果て……。いわば、システムがその先の標榜するものに向かって思い通りにするための具現化した姿だと言うべきだろう」

「シ、システムの具現化……ですか!?」


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