浮遊戦艦の中で353


「逆鱗に触れて……?」

 ジェリー・アトキンスが問うと、シモーヌ・シェラストン博士は黙り込んだ。悲しそうな表情で。

 そこに大膳が割って入り、

「ジェリー殿。これ以上は聞くのを止めた方が良い。シェラストン博士にとって、この事実は非常につらい……」

「いいえ、ダイゼン・ナルコザワ。私は大丈夫です。なぜなら、これはいずれ分かることなのですから」

 言って、シモーヌ・シェラストン博士はジェリー・アトキンスの目をジッと見つめた。そして、

「私はその後、科学界から抹殺されたのです。いえ、現存する社会から、殺人者という大変不名誉な濡れ衣を着せられました。あなたという優しい存在ではない、別の人造人間を密かに製作したという罪で……」

「な、それはどういう……」

「ええ、私が軍の命令に沿わなかったことに腹を立てた一部の上層部の人たちによって、あなたとは別の姿をした別の人造人間にひどい苦痛を与えて、著しく洗脳を施したのです。そして……」

「そして……?」

「ええ、そして、洗脳された別の人造人間たちは、大量の人々を殺害しました。そう、もちろん派遣された他国の人々を……」

「ま、まさか!? それを製造したのが君だと……!?」

「ええ、そうよ。そういった殺人マシーンを製作したのは、この私だと、当時の新聞社に情報をリークさせて、反戦運動が盛んだった当時の人々に訴えたの。あの女博士が、戦争をより残酷なものに変えたのだ、と」

「なんてひどいことを!!」

「それだけではないのだよ、ジェリー・アトキンス殿」

「それだけではない? では、、どういう……」

「そう、シェラストン博士の身の回りに起きたことは、それだけではなかった。当時、反戦運動に熱を帯びた人々は、何と、シェラストン博士の家に火を点けて焼き払ってしまったのだ」




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