浮遊戦艦の中で354


「火を点けて、家を焼き払っただと!? シモーヌ、き、君の家を!?」

 ジェリー・アトキンスは、目を見開いて叫んだ。

「ええ、そうよ。私の家は、完全に焼き払われたわ。骨一本、跡形もなく……」

「骨一本って。それじゃあ……」

「その時、私は家に居たわ。もちろん、ジェリー。あなたを作り出して三年が経過したころに」

「と、ということは……」

 言って、ジェリー・アトキンスは言葉を失くした。彼にとっては曖昧な記憶でも、それは確かに現実で起きた事象であると悟ったからだ。

「ええそうよ、ジェリー。軍は、私を当時の最高機密だった化学兵器で家を焼き払ったわ。そのお陰で、私のお葬式はしなくて済んだみたい。だって、私の死んだ証拠なんてどこにもないんですもの」

「ば、馬鹿な……」

 狼狽えるジェリーを見つめ、彼女は続けた。

「それで、あなたと婚姻関係を結んだのは、その後のことになるわ。もちろん、私は死んだことになっているから、別の人間として生きて来たのだけれどね」

「で、では、もしかして君は!?」

「そうよ。私もあなたと同様、オリジナルの私をコピーして作り出された人造人間。でも、中身は正真正銘のシモーヌ・シェラストンよ。だって、こんなこともあろうかと、私は記憶をこの身体に完全コピーして待機させていたのだから。身体の構成だって、これっぽっちも違わないわ。まあ、一つだけ違うとすれば、あなたと同じ、年を取らないということ」

「私と同じ、年を取らない? 言われてみれば、私は自分の姿をこれしか知らない。と、ということは!?」

 言われてシモーヌ・シェラストンはこくりと頷いた。

 

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