浮遊戦艦の中で349


 リゲルデは、ここであきらめがついた。憑き物が下りたといった具合だった。

 自分一人がどうあがいても、この世界をどうこうできるものではないと気が付いたからだ。アマンダ・シャルロッテの敵を討ち、あわよくば今のこの姿で世界を混沌に導くことが出来れば、彼の念願は叶う。

 しかし、目の前に居る鳴子沢大膳の話を聞けば聞くほど、自分の存在の小ささを認識せざるを得ないのだ。

「ならば、これから俺はどうすればよいというのだ。貴様ら、真・ペルゼデールネイションの配下に入れとでも言うのか?」

 リゲルデは、諦めついでに身の振り方を考えた。せっかく手に入れたこの力を、何もせずに持て余すのは、どうにも腑に落ちなかったからだ。

「フフッ、あなたにはやって頂くことが山ほどある。ええ、そこにおられるジェリー・アトキンス殿と同様にね。ジェリー・アトキンス。君も因果な運命の持ち主だ。私は普段から、宿命などという言葉を用いぬ男だが、どうも君の人生を窺っていると、そう考えねばならんような気がする。そうは思わんかね」

 大膳は、リゲルデの隣で呆けているジェリー・アトキンスに意味ありげに問うた。

 ジェリーは、余りの常識から逸脱した話に、目をぱちくりしていたが、

「ダイゼン・ナルコザワ。わたしは以前、地球にいた頃から、ところどころ記憶が曖昧な所がある。あなたはわたしのことを何でも知っているようだが、それと何か関係があるのですか?」

「ああ、あるとも、ジェリー・アトキンス。私が、ここに居る虹色の人類たちがまとめた資料によれば、あなたはここ百年前に生を受けたことになっている」

「ひ、百年!? 百年前ですと!?」

「そう、今から百年も昔の話。そしてあなたは、何度も転生した。同じ地球、同じ人物として。そして、何度もある女性を伴侶として迎えた。いや、伴侶に迎え入れられた」

「ま、まさか……。ミスターナルコザワ。それはシモーヌ……シモーヌ・シェラストンのことを言っているのですか!?」


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