浮遊戦艦の中で344
「望むところよ!!」
リゲルデは熱くなってしまっていた。どうにも目の前の大男――鳴子沢大膳に、自らの歩んで来た人生を、全て見透かされてしまったようで気味が悪かったのだ。
「ミ、ミスターワイズマン、おやめなさい!! そんな挑発に乗ってはいけない!!」
傍らで話を伺っていたジェリー・アトキンスが制止しようとするが、
「グオオオオオオッー!!」
雄たけびと共に、リゲルデは再び
「あなたは、物理的な力や物だけで全てをねじ伏せられると考えている。しかし、それはあなたの居た世界の、あなたたち人類の常識。しかし……」
言って大膳は、従えた数人の虹色の人々に視線を送ると、そっと手を上げ指示を出した。
リゲルデは、感情の赴くまま一気に大膳の懐に飛び込んだ。飛び込んで、あの熊のような大男に一発でも拳をぶちまけたい気持ちだった。
しかし、その行く手を阻んだのは、無論、数人の虹色の人類である。数人の虹色の人類は、いかにも統制の取れた動きでリゲルデを取り囲み、その取り囲んだ刹那、皆が一様に同じ姿に変化したのである。
「な、何っ!? ば、馬鹿な……!?」
リゲルデはたじろいだ。何を隠そう、虹色の人類たちはすべてアマンダ・シャルロッテの姿になっていたからだ。
「馬鹿な!? シャルロッテ……だと!?」
リゲルデは、最愛の女性の姿を目の前にして、一瞬にして闘争本能を失った。これが大概の確率で本物でないと分かっていても、本能的に戦う気力が無くなってしまったのだ。
「さあ、討ち果たすがよろしい、ワイズマン殿。あなたはまだ、その幻影から逃れられていない。その物理的な姿に身も心も縛られたままなのだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます