浮遊戦艦の中で336



 漆黒の硬い外骨格に覆われ、背中から六枚の翼の生えた今のリゲルデの身体をもってしても、あれだけ痛めつけられれば非常に心配な所である。

「さて、ここからが本番だ。奴らが、この誘いに乗って来てくれるか……」

 先ほどの予測からすれば、あの三本足の赤い巨人も、自分に合う生命維持装置を探し回ってを起こしているに違いない。

 そして、三本足の赤い巨人は、その勢いのまま数多あまたある真球のカプセルに対し、破壊の限りを尽くしているのだ。

 カプセルの中に居る謎の生命体は、次々に眠りから目覚め立ち上がろうとした。だが、その半数以上は完全に覚醒出来ぬまま次々と息絶えて行く。

「きっと、あの者たちも、何者かによって集められた〝選りすぐられた戦士〟に違いない……。こうして無残にも、何も出来ぬまま死んでゆく姿を目の当たりにするのは忍びないが、わたしがあの者たちの全てを相手にして生き延びることは不可能だ。これも仕方がない事なのだ……」

 ジェリーは、眉間にしわを寄せ、軽くうつむいて自分自身にそれらの死を投影する。これが〝戦士〟たる彼の理念である。

 しかし、カプセルを割られたうちの極少数の〝戦士〟たちは、この状況に戸惑いながらも覚醒した。そして、自分たちのにも気づき、各人が生命維持装置の必要性に辿り着いたのだ。

「こうしてはいられない。は、早く……。早くミスターワイズマンの意識を取り戻さねば」

 しかし、ジェリー・アトキンスの思惑以上に、〝戦士〟たちの争奪戦は混沌を極めた。

 リゲルデを鷲づかみにした三本足の赤い巨人もさることながら、他の人類とは異形の戦士たちの暴れぶりは想像の域を超えている。


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