浮遊戦艦の中で337


 その時、緑色の水棲生物が雄たけびを上げながらこちらに近付いて来た。まだ、自らに寄生していた下等生物とくんずほぐれつの格闘を繰り返している。

 その後を追うように、赤茶色の化け物も地響きを鳴らしながら駆け寄って来る。赤茶色の方は、腕をやられたせいで、心なしか動きに勢いがない。

「ううむ、これで役者はそろった。これで何とかなる」

 ジェリー・アトキンスは、命懸けの作戦に出た。彼は、二つの生命維持装置を両脇に抱え、化けの物戦士たちが闊歩するど真ん中に飛び込み、そしてそれを天高く投げつけた。

「それ! これがお前たちの命の源だ!!」

 二つの生命維持装置は回転をしながら宙を舞った。

 それに気づいた〝戦士〟の群れは、まるで砂糖に群がる蟻の如く一斉に気を引かれ、それに食いついた。

 当然、リゲルデを鷲づかみにして暴れ回っていた三本足の赤い巨人も食いついた。緑色の水棲生物も食いついた。赤茶色の化け物も食いついた。その後を追って、まだ覚醒して間もない戦士の化け物たちも怒涛の如く駆け寄った。

 ジェリーは、駆け寄る戦士たちの合間を縫ってその枠を出た。途中、何者かの身体の一部にぶち当たって突き飛ばされそうにもなるが、必死で倒れるのを堪えた。

「ミ、ミスターワイズマン!!」

 やっとのことで三本足の赤い巨人の手から解放されたリゲルデは、ボロ布のようになりながら固く冷たい床に突っ伏していた。

「ジェ、ジェリー・アトキンス……。これは貴様がやったのか……?」

 どうやらリゲルデは死んでいなかった。この身体は、かなり頑強に出来ているのだろう。

「ええ、そうです。ミスターワイズマン。ところで、何とか立ち上がれますか?」

「ううむ、今すぐと言うわけには行かんが。少しだけ時間をくれんか」

「ええ、少しなら。でも、早くしませんと、あの連中の激しい争いに巻き込まれないとも限りません。ここから少しでも早く離れませんと……」

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