浮遊戦艦の中で335
ジェリー・アトキンスは、よろめきながらも力の限り床を蹴り上げた。先ほどまで強く身体を締め上げられていたせいか、なかなか容易に息が回らない。血流の滞りによって、体中が酸欠状態なのである。
それでも彼は一目散に走った。ここは二体の化け物の気を器用に引いていられる状況ではない。ただ駆け抜けて、それなりの距離を保たねば簡単に捕まってしまうと判断したからだ。
二体の化け物は、それに気づいた。気づいたは良いが、鞭状の下等生物が執拗に彼らに絡みつこうとして、すぐさま後を追うことが出来ない。
「危なかった……。災い転じて、とはこういうことか。しかし、一つの身体に二つ以上の生命体が存在していたとは、
この時、ジェリー・アトキンスは薄々勘づいていた。もしやもすれば、ここに居る数多の存在は、どこぞから集められた〝選りすぐりの戦士〟なのではないか、と。
どこぞ――?
その疑問符だけが残るが、あれだけの身体能力と戦闘能力を兼ね備えた者たちが居るということは、その可能性は否定できない。
「それにしても、あの緑色の奴……。あのカエルが進化したような奴は、その考えからすれば寄生していた方にだいぶ分があるように感じる。しかし、所詮は戦略も何もない下等な生き物でしかないのだがな……」
言いつつ、ジェリーは何度も振り返りながら、リゲルデの居るエリアへと駆け抜ける。
二体の化け物との良い感じの間隔を取りつつ、付かず離れずを繰り返していると、
「やっと、やっと見えて来たぞ」
そこには、三本足の赤い巨人が暴れまわる光景があった。
黒い翼の生えた姿のリゲルデは、相変わらずぐったりとしている。そのリゲルデを、ボロ雑巾のようにグルグルと振り回し、そこらじゅうのカプセルに体当たりを食らわせている。
「早く、早く助けねば……。ミスターワイズマン。もう死んでなければ良いが……」
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