浮遊戦艦の中で334
二体の化け物らはハッとした。なんと、鞭状の下等生物の巻き付いた物の中に、ジェリー・アトキンスの身体と一緒に二つの生命維持装置があったからだ。
二体の化け物らは、驚いたよう同時に雄たけびを上げ視線を釘付けにした。さすがは下等生物なだけに、自分の巻き込んだ生命維持装置を押しつぶして壊してしまったとしても、それが自らの命を絶つことだなどと考えても居ない。
先に手を出したのは、緑色の水棲生物である。自らの腕に寄生した鞭状の下等生物の根本の部分を薙ぎ払おうと、もう片方の腕で強く叩き切ろうとするが、どうにも離れようとはしない。
そればかりか、自らの宿主である緑色の水棲生物に向かって、鞭状の先端から牙をむき出し、必死に抵抗するのである。
それを見た赤茶色の化け物が、隙を見て持っていた鉄片を無造作に振り下ろして来て、緑色の水棲生物の腕を叩き切ろうとして来た。
だが、鞭状の下等生物の動きの方が早かった。寸分の差で赤茶色の化け物の持っていた鉄片を牙で叩き落し、そればかりか赤茶色の化け物の片腕に巻き付いて握り潰してしまったのである。
「グオオオオオオッ!!」
どうやら、赤茶色の化け物の身体は非常にもろく出来ていた。筋肉質で力はあるものの、その肉体は溶岩石の岩盤のように圧迫に弱いようである。
それを見た緑色の水棲生物が、落ちていた鉄片を拾い、鞭状の下等生物を叩き切ろうとする。しかし、それも徒労。鞭状の下等生物は、鉄片を巻き込んでそれをぐにゃりと押し曲げてしまった。
その時、根元で巻き付かれていたジェリー・アトキンスの身体にゆるみが出た。その勢いで彼は固い床にボトリと落下し事なきを得る。
「ぐうう、不覚……。しかし、これならば……」
彼は意識が遠のいているのを実感しつつも、無理矢理にでも気を奮い立たせ、立ち上がると、目の前に転がる二つの生命維持装置に気付き、それを抱え込んだ。
「こ、これを……これを餌にすれば……」
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