浮遊戦艦の中で333


 突然、緑色の水棲生物の腕から細長い突起の様なものが生え、それがジェリーの伸ばした腕に絡みつ来た。

「ば、馬鹿な……!?」

 予想外である。その突起の付いた細長いものが腕にきつくまとわりつき、即座に身体全体を雁字搦めにしてしまったのだ。

「何だ、こんなものが……!?」

 その時、緑色の水棲生物も驚いた表情で彼を見やった。同じく対峙していた赤茶色の化け物もジェリーを見つめ驚いていた。

「ど、どういうことだ。この細長い触手のようなものは何なのだ!? グウウ……」

 ジェリーは呻き声を上げながらもだえ苦しんだ。

 その正体とは、緑色の水棲生物に寄生する別の生物の姿である。それは緑色の水棲生物の意思とは無関係の、近付いた獲物を捕らえて食するだけの下等生物なのである。

 ジェリーは、そんなものがあるとも知らず、まんまと敵に捕らえられてしまった。

「こ、これは、コバンザメのようなものなのか……!?」

 大誤算である。相手は一つだけの存在ではなかったのだ。

 それは、緑色の水棲生物の意思とは無縁であるために、それだけが自由意思で行動する。しかし、それこそが彼らの普通の状態なのである。

 緑色の水棲生物は、ニヤリと笑った。いや、真実を言えば、我々人類のように口角を上げて笑ったわけではない。

 だが、ジェリー・アトキンスが、その刹那に捉えたものとは、緑色の水棲生物の嘲笑とも取れる感情である。

「グ、グウウウ……!!」

 鞭上に伸びる下等生物に、ジェリーは身体を強く締め付けられた。血流が圧迫によって滞り、呼吸さえもが出来なくなる。

 それでも二体の化け物らは動きを止めなかった。向こうも生きるか死ぬかの瀬戸際である。この時、二体の化け物の目に映るジェリー・アトキンスの姿は、どこぞから飛んできた蠅程度にしか感じられていない。

 しかし、その時――


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