浮遊戦艦の中で332
ジェリーは、軍では誰もが認める凄腕のエリートパイロットだった。その性格も家柄もお墨付きである。
だが、だからと言って、彼は人類以外の敵を想定して訓練して来たわけではない。
彼の予想通り、二体の化け物たちが、たとえ何らかの文明を持った生き残りの存在であったとしても、その文明や環境が少しでも違えば、辿り着く思考の終着点は全く変わってしまうのである。
ただでさえ、人間同士であっても完璧に解かりあうことは不可能なのだ。それを調子に乗って、理解したつもりで次の行動を起こしてしまうのは、無謀なことだと考えたのだ。
「この後、どうする……。あの化け物たちは、わたしの予想通りの行動に出るか。はたまた全く予測の範疇を超えた行動に出るか……」
しかし、どう迷ったとしても、彼が取るべき行動は一つ。
「奴らが動揺をしているさなか、わたしの存在を知らしめ、ミスターワイズマンが居る場所へ誘わなければならないのだ!」
だが、その前にやらねばならないのは、あの二つの生命維持装置をどちらも奪い取ること。
それらを奪い取ることによって、二体の化け物の気はそがれる。そのそがれた気の行き所に彼がようやく姿を見せ、一気に意識をも奪う算段なのだ。
「それには、先ず……」
動揺を見せた二体の化け物の死角を利用し、懐に飛び込む。こんな時、二体の化け物の身体が大きいのはかなり具合が良い。
ジェリーは、予測の限り二体の化け物の動きに合わせて間に入った。
案の定、二体の化け物は一度目の特攻よりかなり動きが鈍い。
(占めた! これなら容易に二つの生命維持装置を奪い取れるかもしれない)
生身の肉体とは言え、ジェリー・アトキンスはよほど肉体が鍛え上げられている。そのすばしこさは常人を余裕に超えるのもである。
あっと言う間だった。ジェリーは、死角の死角を優に駆け抜けて、緑色の水棲生物の左腕に辿り着いた。
(手が緩んでる。これなら行ける……!!)
彼がそう思った時だった――
「な、なんだと……!?」
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