浮遊戦艦の中で331


 正に力対力。速さ対速さ。技対技――。

 ジェリーは、彼らの戦いぶりを分析するに当たって、真っ向勝負と言うに相応しい戦闘に違和感を覚えていたのだ。

「これなら行けるかもしれない。これまでわたしが軍で受けて来た訓練は、同じ人類相手でしかなかった。それだけに不安だったのだが、これなら今のわたしでも行けるかもしれない」

 ジェリーは言いつつ、次のフェイズに移行した。

 彼は、化け物二体の大概の行動パターンを読んでいる。そこで、このまま二体の化け物の死角を利用し、リゲルデがピンチに陥っている場所まで彼らを誘導しようというのである。

 それには先ず、もう一度緑色の水棲生物の懐に潜り込む必要があった。まんまと死角を利用し、今度は化け物の手中にある生命維持装置をどちらも奪い取ってしまおうと言うのである。

 二体の化け物は、未だにたじろいでいた。先ほどより、一見してどちらも動きが鈍くなっている。

「いきなり手元に、生命維持装置が一個追加されたのだからな。それに、どちらが自分たちに適合したものかも分からないと来ている。ぱっと見で同じような物だからな」

 二体の化け物の動揺は、ジェリーの予想のさらに上を行った。果たして言葉は理解できないが、互いの攻撃の手と同時に、激しい口論のような雄たけびが聞こえて来たからだ。

 こういった時、ジェリーは妻と結婚した当時のことを思い出す。

「そうだ。わたしの妻のは、一緒に暮らし始めた当初、互いの生活様式や、宗教の違いによく戸惑ったものだ。様々なことがきっかけになり、その縁で意気投合して婚姻したまでは良かったが、生まれた国も違えば、育った環境もまるで違った。それでも好きで一緒になった二人だからこそ、わたしたちは互いの考え方や生き方を尊重し合うようになった。もし、奴らが我々人類と同じように、何らかの文明を持った生き物であったなら、その背景から、わたしには思いもよらない思考に辿り着いているのかもしれない。ここで油断は禁物だ……」


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