浮遊戦艦の中で318

  

 ジェリーは目を凝らし、その二体の化け物の姿に見入っている。

 そんな光景を見て、ジェリー・アトキンスは目を爛々と輝かせていた。口では逃げろと言っておきながら、彼のつま先は二体の化け物の方を向いている。闘争本能が抑え切れないのだ。

「お、おい、貴様……。ジェリー・アトキンス。ほ、本当に貴様の言っていた通りだな。奴らの、あの異様ないでたちは……」

「え、ええ……。それは当たり前のことです。ですが、今こうして詳細を確認していたところです」

 リゲルデは、彼は嘘があまりにも下手だと思った。生真面目な男という理由からだけではない。すでに彼の身体からは、戦う男の熱気がみなぎっている。

「貴様……。あんな連中を目の前にして、怖くないのか? 俺は正直、手の震えが止まらんぞ……」

「いえ、わたくしとて手が震えております。ほれ、このように」

「ほざくな。その震えは決して恐怖からではあるまい。誤魔化さんでもわかる。選ばれた戦士だけが持つと言う抑えきれぬ武者震いなのであろう」

「御見それいたしました、ミスターワイズマン。ええ、わたしは先ほどから、あのような化け物の戦いに、それ相応の戦略というものを感じました。あれらは、あのようなこそしておりますが、かなりの知能と実力を兼ね備えております」

「貴様、この短時間でそのようなことを……」

 リゲルデは、この男につくづく返す言葉を見出せなかった。ジェリーは、二体の化け物をあのようななどと口にしておきながら、ジェリー・アトキンス自体のこそ、かなりの紳士的好青年にしか見えないのだ。

(人は、見掛けによらんとはよく言うが、この男……自分の特性を良くわきまえている。しかし、あの化け物。言われてみれば戦い方にかなりの知性を感じる。ただ本能だけで戦闘を行っているのではない。我々の感覚で言えば、よほどの修練を積んだ動きにしか見えん。どういうことなのだ……?)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る