浮遊戦艦の中で319

  


「しかし、貴様……ジェリー・アトキンスよ。あ奴らと貴様とが生身で戦うのは無理だ。見ての通り、あ奴らは存在自体が武器だ」

「ええ、ミスターワイズマンのおっしゃる通りです。あの緑色の奴の方……あれは、あの身体の粘性を利用してあらゆる壁や床を自在に張り付いて飛び回っています。そして、赤粘土色をしたあの化け物。奴の方は、おそらく筋力が以上発達した存在です。あんな奴が思い切り何かを投げつけたりして来れば、それは私たち人間が考える以上の破壊力を有するでしょう。あの動きに今のわたしが立ち向かったところで到底かなわないでしょう」

 そうは言いつつも、彼は未だに爛々と目を輝かせている。

 彼は根っからのパイロットなのだ。もう一人の伝説の兵士である羽間正太郎のように、体術まで会得しているわけではない。

「口惜しいです。ここにフェイズウォーカーの一機でもあれば……」

「そうだな。あれらがあの場所で、ああして戦い合っていては、この場所から出るに出られんのだからな。さすがの貴様でも、その能力を生かし切れんと言うのはなんとも……」

 言って言葉を終えた瞬間、二人の背筋に得も言われぬ寒気が走った。

「まさか……」

「ええ、この感じ……。そのまさかかもしれません」

 二人は、身をかがめながら恐る恐る後ろを振り向くと、

「ミスターワイズマン、逃げて!!」

「うわあっ!!」

 彼らの背後に全身を真っ赤に染めた身長が三メートルもあろうかという巨人が突っ立っていた。その赤い巨人は彼らを凝視するなり、両腕を振り上げ、

「コホホォウ……」

 という、何とも言葉とも雄たけびとも取れる息を吐きながらその腕を勢いよく振り落とした。

「ば、馬鹿な……!?」

 振り落とした腕は、あまり身体の自由の利かぬリゲルデを狙い定め、そのままリゲルデの脳天に打ち振るわれる。

「ミ、ミスターワイズマン!!」

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