浮遊戦艦の中で315



「わ、わたしではありません! ですが、わたしが目覚めて這い出したときには、このように球体が割られていたのは確かです。わたしが寝かしつけられていたカプセルは、このエリアではありませんから、このような状態になっているのを初めて見ました」

 嘘か真かは定かではないが、ジェリーは本当に焦っている様子だった。リゲルデは彼の言葉を信用し、二人でそのあたりの様子を見て回った。

「……ということは、ジェリー・アトキンス。この俺が貴様と出会った場所に転がっていた、な。アレの正体は、ここから貴様と同じように目覚めて這い出してきた誰かなのかもしれんな……」

「はい……。そうかもしれませんね。だけど、なぜこのような……。割れた破片はガラスではありませんが、固化した物体が割れたものと見受けられます。その破片が中に飛び散って入り込んでいるところを見ると……」

「うむ、これは外部からの破壊によるものと見て間違いあるまい」

「しかし……。なぜ、このようなことになっているのでしょう?」

 二人は互いに眉間にしわを寄せ、その割られた球体をジッと見つめ込んだ。

 他の割られていない球体の中身は、場内があまりにも薄暗いためか、中にどんな人物が入っているのか容易には確認できない。

 ただでさえ、このような未知なる施設が存在しているだけでも不可思議であり、その目的でさえ考え余り得るところなのだが、ジェリー・アトキンスといった類まれなる才能を持った青年が、知らず知らずのうちに捕らえられていたことも疑念のうちの一つだった。

「ミスターワイズマン。こうしてここで考え込んでいても何も始まりません。もっと先へと探索を続けてみてはいかがでしょうか?」

「相分かった、ジェリー・アトキンス。戦場にて未知数なるものに対して、安易に行動を起こすのは良くないことだ。だが、その情報の選択肢を得られぬもの良くないことだ。ここは我々の本能の赴くままに情報を集めよう」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る