浮遊戦艦の中で298
意外にも、足音の主は名乗りを上げた。その時リゲルデは驚愕を禁じえなかった。
「な、何!? ジェリー・アトキンスだと!? ま、まさか……!?」
彼が驚くのも無理はない。なにせジェリー・アトキンスと言えば、
「き、貴様がジェリー・アトキンスだと!?ジェリー・アトキンスと言えば五年前の戦乱の元エースパイロットの名前ではないか!? 冗談はよせ! ジェリー・アトキンスは黒い嵐の事変で死んだはずだ!! このような薄気味悪い場所でのそのような戯れ言は悪趣味だぞ!!」
リゲルデはムキになって言葉を投げ返した。
一応彼も、ゲリラ活動を行っていた反乱組織に属していた過去がある。シュンマッハと言う悪童に出会いさえしなければ、彼は真っ当な人生を送っていたのかもしれない。
だが、ジェリー・アトキンスという名を知っている限り、彼は生粋のゲリラ組織上がりの薄汚れた記憶からは逃れられない。ジェリー・アトキンスとは、それほどまでに名の知れた反乱軍のエースパイロットなのである。
「冗談などではない! わ、私はジェリー・アトキンスだ、正真正銘のジェリー・アトキンスだ! 黒い嵐の……そのような事象は私には分からんが、私の名はジェリー・アトキンスだ! なぜ私がここに居るのかも、なぜこのような場所で眠らされていたのかも訳が分からん! 声の主よ。あなたはここの管理者なのか!?」
「眠らされていただと!? どういうことだ? 俺はここの管理者などではない! この俺にもここの場所の意味が分からん」
「では、声の主よ! あなたは誰なのです? なぜあなたはここに居るのです?」
「お、俺は……リゲルデ・ワイズマン。ある切っ掛けがあり偶然この場所を知り、そしてたまたま興味を抱いてここに迷い込んだだけだ」
ジェリー・アトキンスを名乗る男は、そこで言葉を切った。なにか考え込んでいる様子だ。
「ならば、ミスターワイズマン。わたしと取引しよう」
「取り引きだと?」
「ああそうだ。わたしは現在、この状況を全く把握できない。そしてあなたは、この奥に何があるのかを知り得ない。だから、互いの知り得た状況を分かち合い、情報を共有しよう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます