浮遊戦艦の中で297
リゲルデは先手とばかりに叫んだ。どのみちこれが敵性を持った相手だとすれば、たとえ隠れたとしても逃げようがない。このような平坦な場所なのだ。見つかろうものなら、たちまち命はない。体の自由が利かぬ今とあっては、戦略云々を考えているひまなどありはしないのだ。
「そこに居るのは誰だ!?」
リゲルデの大声が空洞内に木霊した。と同時に迫り来る足音がひたと止まった。
この時、リゲルデは確証を得た。奥から聞こえて来る足音は、ただの空耳ではなかったということだ。
「シモーヌなのか!? そこに居るのはシモーヌか!?」
もう一度叫んでみた。もしこれがシモーヌだったとしても、考えに詰まるところである。
リゲルデは一度間を置いたが、しかし、まるで返事はなかった。
だが、時が止まったような静寂に耳を澄ましていると、驚いたことにその足音はまたゆったりとしたリズムでサクサクと音を立てながら近づいて来たのだ。
「誰だ、誰なんだ貴様は!? こんな一方通行の洞窟のどこから入って来た!?」
リゲルデは再び問い掛けてみた。が、案の定返事はない。
(どういうことだ? これは何の足音なのだ?)
リゲルデのこめかみに冷たい汗が滴る。これがシモーヌでなかった場合、彼にとってピンチ以外の何物でもない。
その時である。
「わ、私は……元アメリカ空軍の少尉、ジェリー・アトキンスと言う。私は……私がどうしてここに居るのか分からず困っている。教えて欲しい。ここは何処なのだ? なぜここに居るのだ……?」
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