浮遊戦艦の中で269


 デカ物たる謎の機体は、スラスターノズルから強大な爆炎を上げ、こちら側に突進して来る。

「何なのだ、寄ってたかって何なのだ貴様らは!? ええい、鬱陶しい!! この俺にたてつく輩など蹴散らしてくれる!!」

 言って、リゲルデはレーザーソード二振りをクロスに持ち直すと、向かって来る謎の機体の攻撃に身構える。

 謎の機体は唸りを上げながら突進して来る。大剣を大上段に構え、沼地もろとも叩き切ろうという算段である。

「そんなのろい動きで、よくも!!」

 リゲルデは、ターゲットスコープに謎の機体を捉えた。近付いたところをクロスさせたレーザーソードで薙ぎ払い、一気に懐に飛び込んでコックピットに一撃を食らわそうという算段なのだ。

 謎の機体は、けん制で胸の機銃を撃って来た。

「なにを、その程度で!!」

 リゲルデはそれも範疇とばかり、機体に軽くひねりを加え弾丸をかわす。

 それでも謎の機体は何度も機銃を撃ちこんで来た。だが、間合いに入る前に機銃の連射が事を終えたとき、

「馬鹿め! 弾丸の所持数も考えずに無闇に撃って来るから!!」

 リゲルデは、大上段に構え懐ががら空きになった謎の機体の胴の部分に狙いを定め、

「戦略云々もわからぬど素人めが!!」

 と、ホバースロットル全開に一気に相手に詰め寄った。

 だが、その時である。

「うぐおおおおっ……!!」 

 瞬時にリゲルデの天地がぐるりと逆転した。かと思うと、今度は視界が渦を巻き、得も言われぬ圧力と浮遊感で何が何だか分からない状態になった。もうこうなれば、まるで全ての感覚を現実から切り離されたように何も対処できない。何も考えられない。

『そうだ。人間のお前よ。これが今のお前の考えと同じ状態なのだ。地に足のついていない愚か人そのものなのだ』


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