浮遊戦艦の中で268


 リゲルデのその予測は間違いではなかった。

『野蛮な人間のお前よ……。何故にお前は生きる。そして何故に戦う……』

 唐突に頭の中に声が入って来る。

「な、何だ? どこから……!? 無線ではない。三次元ネットワークからでもない……」

 リゲルデは慌てて計器類のメーターに目をやった。しかし、音声やネットワークレベルの通信でないことは確かだ。

『野蛮な人間のお前よ……。お前は滅ぶべきだ。そうやって自らの怨念に生きるお前は滅ぶべきなのだ……』

「な、何を言う!? お前か!? そこの飛びまわっているお前がこの俺に話し掛けて来るのか!? 無礼だぞ、この化け物の分際で!!」

 リゲルデは、白蓮改の頭上をグルグルと旋回し続けている小型のヴェロンに向かって声を張り上げた。

『化け物とな。よくもそんなことを……。身の程をわきまえぬ悲しきさがよ……』

「なんだと!? 貴様、何を言う!?」

『憎しみに駆られ、そして我欲のみで他者を蹴落としてきた人間のお前よ。お前こそが真の化け物。野蛮な人間のお前よ。お前はその自らの我欲によってこの世界を混乱の渦に他者を巻き込んでいる』

「な、何を言っている? 凶獣め! 噂通り余計な知恵をつけおったな」

『やはりお前は化け物だ。あのシュンマッハと同じように……』

「シュンマッハだと!? 何故いまその名前が出て来る!?」

 リゲルデが言ったその瞬間だった。コックピットの警告音が鳴り、モニターに映し出されたのは大剣を振りかざして突進して来る、あのデカ物の姿だった。

 強制回線から怒鳴り声が聞こえて来る。

「シュンマッハと共謀し、そしてこの世界を混乱に陥れたお前のような奴が居るから、俺たちの世界に悪影響を及ぼしたのだ!! そんなお前は滅びねばならん!!」

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