浮遊戦艦の中で266

 

 その時、

「クッ……。とうとうデカ物が動き出しやがったか。まだもう一機の正体が分からんと言うのに……」

 二機を相手にするのは困難である。

 いくらあのデカ物の動きが鈍いとは言え、もう一機の素性さえ知れないのだ。どんな攻撃をされたのかさえ分からない今、いくらリゲルデが戦略家の端くれと言っても計略の立てようがない。

「だが、あの突然の衝撃で、肩のアーマーに亀裂が入っただけだというのも妙だ……。派手に何かがぶつかったという割には、少々ダメージが小さすぎるのではないか?」

 これがリゲルデの率直な疑問だった。

「しかしな……。俺が突進した時の速度に対し、もう一体の敵が正確な体当たりをぶちかましてきたと言うのであれば、もう一機の機動力はずば抜けている。ううむ……これはもしかするともしかするぞ。未だに敵の姿が捉えられぬとすれば……」

 リゲルデはニヤリと笑う。

 軌道を変えられ、一度は死にかけたリゲルデだが、そこは冷静になれば頭の切れが違う。答えの落としどころが違う。状況を正確に判断し、適切な対処を行うのはお手の物なのだ。

 彼は、思い立ったが吉日とばかり、再びスラスターホバーのスロットルを全開にした。そして狙いをデカ物の謎の機体に定め突進したのだ。

「もし、俺の考えが正しければ……!!」

 言うや、彼は視線を正面に位置するデカ物にではなく、他の三方向にくれた。すると、

「き、来た!! やはりっ!!」

 リゲルデは二振りのレーザーソードを水平に構えた。そしてくるりと機体を旋回させると、

「ぬえいっ!!」

 気合一閃。向かってきた陰に一太刀振りかざしたのだ。

 向かい来る陰は弾け飛んだ。その疾風の如き軌道は白蓮改のレーザーソードをかすめ、そして軌道を変え再び、白蓮改に襲い来る。

「し、しつこい奴め!! だが、ここで正体見たり!! 貴様の正体。それは、小型の凶獣ヴェロンだ!!」



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