浮遊戦艦の中で252



『そうだ、君たち人類よ。我々は、他の次元世界では君たち同様、人類であった。だが、理由はなぜかは知らぬが、このヴェルデムンド世界だけが我々はこの姿なのだ――』

 声の主のこの言葉は、非常に驚愕的な内容であった。

 だが、それ以上に剣崎らが震えが止まらなかったのは、この言葉を聞いた時だった。

『我々に見えているヴィジョンは、常に同時進行だ』

「同時進行?」

『そうだ。どの他の次元世界も同じ年代、同じ時間を同時に進行している』

「……というと、つまり、声の主よ。お前が言いたいのは、お前が見ている感覚を共有した相手というのは、全てが別の世界のお前の世界の見ている物だということなのか?」

『ああ、その通りだ、君たち人類よ。我々……いや、私が見ているヴィジョンは、どうやら全て他の世界に存在する自分の既視感そのものらしいのだ。そして、この君たち人類が名付けたこのヴェルデムンド世界も、他の世界と同時進行にある世界の一つに過ぎない』

「な、なんだと!? では、このヴェルデムンド世界も、俺たちが元に居た世界の〝地球〟の一つの形だとでも言うのか……?」

『うむ。どうやら、そういうことのようだ。そして我々、君たち人類の言う〝凶獣ヴェロン〟も、同時進行で生まれ出た一つの生命の形……可能性だということだ』

「な、なんと……」

 剣崎は言葉を失った。ここに来て何たる驚愕的な事実。いくら進化したヴェロンの声の主観的な見解であろうとも、ここまで衝撃的な内容を語られたのでは返す言葉が見つからない。

 確かに今の言葉を鵜呑みにしてしまうのは、最も危険な行為である。

 こういった突拍子もない内容であるからこそ、人はそれを信じ込みたくなる状況というものがある。だがしかし、今彼らの能力では、それを否定することも検証することも出来ないのだ。

「な、ならば……ならば再び問うぞ、声の主よ。お前は他の世界では一体どこの誰なのだ? どこで何を行っている人物なのだ!?」


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