浮遊戦艦の中で251


『そうだ。我々は、他の次元に居る自分たちの姿を朧気おぼろげではあるが、窺うことが出来るのだ』

 声の主は言い切った。

 それを聞いた途端、剣崎は疑心暗鬼な気持ちを持つと同時に、少し前にあったとの騒動を思い起こした。

 ニセのフーリンシア大尉の正体は、虹色の人類であった。彼女の目的は、自らが創り出した人工知能〝火之神〟を覚醒させ、それを種にこのヴェルデムンド世界に更なる混沌を招こうとするものであった。

 だがしかし、彼女のその目的の中には、

『他世界で起きた最終戦争を恨んで、こちらの世界をも巻き込んでしまおう』

 という意図があった。

 つまりは、この声の主の言っている話が真実であれば、もしやもすればの語っていた内容も少なからず符合することになる。

「むう……。ならば声の主よ、再び問おう。お前の言葉が真実であるならば、そのお前の言う他の次元世界のお前たちとは一体何なのだ? 我々人類は、この世界に渡航する以前には、我々の言う〝地球〟という世界に居た。その〝地球〟という世界にもお前たちの存在が居るということなのか?」

 剣崎は純粋に知りたかった。もし、このヴェルデムンド世界で進化の一途を辿る凶獣ヴェロンという存在は、一体元の居た世界では何であったのかを。本当に存在しているのかを。

 すると、声の主は迷わずこう答えた。

『君たち人類よ。その質問は我々にとって、かなり酷というものだ。なぜなら、我々君たちの言うヴェロンという存在も、また君たちと同じ人類であったからだよ……』

「な、何ぃ!? 声の主よ、お前たち凶獣が、元の地球では俺たちと同じ人間であっただと!?」



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