浮遊戦艦の中で248
『そうだ。これは、君たちが凶獣ヴェロンという名で恐れを抱いている存在。私の声だ……』
「な、何だと。この声の主が凶獣ヴェロンだと……!?」
剣崎の手の震えが止まらなかった。
ヴェルデムンドという魔境の大地に移民して以来、最大にして最強の天敵であった凶獣ヴェロンである。ある時は地球からの移民団を丸ごと食い散らかされ、ある時は人間同士の争いに横やりを入れられ、ある時は互いの戦略の
『君たちが言葉を失うもの無理もない。だが、これは現実で本当のことだ。こうして我々は君たちとコミュニケーションをとることが出来るようになった。そこまで我々は進化したのだ』
「し、進化しただと……!?」
剣崎はこの時、さらなる衝撃と同時に、神に対し多大なる畏怖を感じざるを得なかった。
彼は戦略家という立場上、比較的現実主義者側の男だった。それだけに、自らの家系に信仰のあった宗教を受け入れていたが、それは道義的な意味合いからの受け入れでしかなく、端から神という存在は社会的合理システム上の象徴とでしか捉えていなかったのだ。
だが、今この時は違う――
(ば、馬鹿な……。この俺は、俺たち人類側に凶獣の擬態化した姿を見破れただけで進化の兆候が表れらのだと有頂天になっていた。しかし、これはどうだ。あの凶獣たちは、擬態化をしてこちら側の様子を窺っていただけでなく、適性体である俺たち人類側にこうやってコミュニケーションを図り、それで何らかの意図を訴えかけて来たではないか!! それも、俺たち人類では到底不可能なテレパシー技術などを用いて……)
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