浮遊戦艦の中で247
「何だと!? 凶獣が羽根を落としたまま歩み寄って来ているだと!?」
剣崎は、激しい口調でミコナス准尉に問い返すと、
「は、はい……。六〇五部隊のフォヒナ・レン中尉からの報告です。どうやら凶獣ヴェロンの数体が六〇五部隊に歩み寄って来て、何やら語りかけて来ている……と仰っています」
「語りかけて来ている? そ、それはどういうことだ?」
「良く……良くは分かりません。しかし、レン中尉が仰ることには、どうやら凶獣側は直接中尉たちの頭の中に意思を語りかけて来ている……ということようです」
「つまり……テレパシーということか!?」
「そ、そのようです……」
実は、凶獣ヴェロンが羽根を落として歩み寄って来るということ自体が前代未聞の出来事であった。
凶獣ヴェロンとは、宙を弾丸のように飛び交い、そして他の有機生命体を捕食してその生態系を維持することだけが常であった。それだけに、羽根を折り畳み、地べた二本の足で歩行する様はこれまでにあり得る話ではなかった。
そんな彼らが、静かに歩み寄って来たというだけでなく、こちら側に念を送って意思を伝えて来るなどとは、これまでに非常に考えにくい事であった。
「ううむ、どういうつもりだ……。凶獣たちめ、まさかこの期に及んで……」
剣崎はかなり戸惑っていた。これがもし、何らかの攻撃の意思によるものであったなら、すぐざま反撃の指示をしなくてはならない。だがこの様子では、凶獣側は……。
『……諸君。かくも勇敢で、かくも慈愛に満ちた人間の諸君よ……』
この時、剣崎の頭の中に、何者かの声が直接響き渡って来た。
「だ、誰だ!? これは何だと言うのだ!?」
剣崎が思わず大声を張り上げて周りを見渡すと、艦橋に居る全員も目を見開いたまま辺りをきょろきょろと窺っていた。
「こいつが……この声が、もしやしなくとも凶獣の意思の声というやつなのか……!?」
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