浮遊戦艦の中で243


 虹色の人類への対処は困難である。にもかかわらず、敵は虹色の人類に留まらないのだ。

「これから我々が目的としている浮遊戦艦――。そして、我が国の主導権を手にしたシュンマッハ政権――。そして虹色の人類に、目の前に蔓延はびこる凶獣群と来ますしね……」

 コドノフ少尉が指を折りながらため息を吐くと、

「それだけならまだしも、ニセのフーリンシア大尉がその名を口にしていたペルゼデールという人物の存在も気になる。どうやらその人物は、地球とこの世界の裏で暗躍し続けていることが窺われる。それに、羽間少佐とも因縁の深い鈴木源太郎博士の存在も忘れてはならん。何せ鈴木源太郎博士という男は、羽間少佐を始めとした数々の証言からしても、姿かたちを変えても自らの意思をつなぎ続けているらしいからな。我らのような凡百の輩からすれば、彼らの考えは正に神をも超えようとしているに違いない」

「私も五年前の戦乱では、羽間少佐と肩を並べ当時の反乱軍に参加し、強制的な身体の機械化を望むヴェルデムンド新政府軍に反目した一人です」

「ああ、コドノフ少尉。確かに君も羽間少佐と同じくゲリラ部隊上がりの反乱軍の一人であったな」

「ええ、大佐。あの当時は、私もまだまだ学校を出たばかりのひよっこそのものだったので、世の中のことが良く見えていませんでした。ですが、こうやって少なからず社会というものを経験すると、この世界が様々な人々の主導権争いの渦中にいることが分かります」

「うむ、なるほど。それで、コドノフ少尉。若い君の目に映っているその主導権争いとはどういうものなのだね?」

「はい。それを話せば長くなるので要約いたしますが、端的に言えば彼らはどれも目的は同じく、主導権の椅子取り争いをしているだけに感じます。互いに互いの考えを非難し合う姿もそうですが、やはり自分たちの考えが有利に働くことを前提に行動を起こしているのは間違いないことです。それには、互いに傷つけ合うこともいといませんからね。人間という生き物は……」

「確かにそれは人の業だな。自分に必要のないものを排除する、または屈服させようとする行為こそ人間の根本的行為として備わっているからな」


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