浮遊戦艦の中で236
「敵性生命体対処マニュアル……」
フーリンシアは、まさかそんなものが人類の間に既に構築されていることを知らなかった。これは、極一部の指揮官と、諜報部員にしか知らされていない極秘事項である。
「そうだ。近年の分析では、君のような他世界からの使者が送り込まれ、何かと我々の世界を混乱に陥れているケースが目立っている。その中でも、我々の世界の住人と何ら遜色なく実在する人物に成りすまして、この世界に混沌を招く輩が後を絶たないのだ。そして君も、その他世界の人物、ケースA4に当たるというわけだ」
剣崎はフーリンシアの腕を取り、そして彼女の顔に自らの顔を近づけると、
「本当の……いや、この世界のフーリンシア君は何処にいる? まあ俺の勘では、恐らくはこの先に現れるであろう浮遊戦艦の中にでも囚われているのだろうがな。そうではないかね、あちらの世界のフーリンシア君?」
フーリンシアは再びギョッとした表情で剣崎を見つめた。いかにも図星であるかのように、その表情を隠し切れずに。
「こちら側の世界の大佐は、とても残酷なのですね。確かにペルゼデール様は仰っておりました。住む世界によって、人の性格は
「なるほど。そのペルゼデールという人物が、あちらの世界の君をそそのかしたのだな?」
「そそのかしたなどと……。でも、一生に一度、現れるか現れないかに出逢った愛する人が、戦乱の犠牲になってしまったのだから、それを叶えてくれる方を信じてしまうのも仕方がないことでしょう?」
「そういうことか。それで君はこの世界に引き込まれて……。大方、あちら側の世界の俺たちの息子も戦乱の犠牲になってしまったというところか」
「そうよ。でも、それだけではないわ。私が居た世界のそのほとんどは、あの方たちの力で焼き尽くされてしまったわ」
「焼き尽くされた?」
「ええ。黒き堕天使ユート・クロヅカと、清き大天使ハヤグモの痴話争いの被害を被って……」
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