浮遊戦艦の中で235
「た、大尉! だ、駄目だ、そんなことをしては!! フーリンシア大尉!!」
アロンソ上級曹長が叫び、前のめりに飛び出そうとしたとき、
「おっとっと……。それをやられたのでは、俺たちの艦は全滅だ。いや、この世界ごと知的生命体の全てが干上がってしまうぞ」
言って彼女の背後から大きな手が伸びて来た。
その大きな手は、フーリンシアの右手ごとエクスブーストの小瓶を鷲づかみにし、寸でのところでどろりとした青い液体の滴下を阻止したのであった。
瞬間、フーリンシアのみならず一同がギョッとした。彼女の背後に熊のような巨体がすっくと現れたからだ。
「えっ? た、大佐!? まさか、剣崎大佐……!?」
フーリンシアは、振り向きざま驚愕の声を上げ固まった。なんと、その場に現れたのは逃走中であった剣崎だったのだ。
しかし彼はいつもの軍服姿であり、凶獣のきょの字も感じさせぬほど人間の姿である。
「やはりな、フーリンシア君。やはり君は……」
剣崎は言いつつ寂しい表情で首を振り、フーリンシアをじっと見つめた。
「た、大佐……。あなたは凶獣に身体を乗っ取られたのでは!?」
「いや、俺はこの身体を誰にも乗っ取られてなどいない。ましてや、凶獣などの敵性生命体なになど一切な……」
「じゃ、じゃあ……。先ほど
「いや、あれはデマなどではない。相手を騙すなら先ず味方からというからな。艦橋に居た連中も、さぞや焦ったことだろう。まあ、ミコナス准尉の演技には大分助けられたのだがな」
そこでフーリンシアはハッとし、
「まさか、大佐は私がこうすることを予測なさっていたと……?」
「その通りだよ、フーリンシア君。俺はもう既に緊急事態ケースA4を発動している。凶獣どもの騒動とは別に、な……」
「緊急事態ケースA4? もしかしてそれは……?」
「そうだ。我々人類に対し、第四の脅威となり得る敵性を持った者が侵入した場合による対処マニュアルのことだ……」
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