浮遊戦艦の中で228


 言って剣崎が不敵な高笑いをすると、その軍服の裾から黒々とした大きな羽根が伸びて来る。

「ま、まさか!? 剣崎大佐が凶獣の遺伝子に取り込まれた……!?」

 ミコナス准尉は振り向きざま席から立ち上がり、携帯していた銃を抜く。すると、

「ほう、一士官の身でありながら、この俺ににたてつく気かね!?」

 剣崎は身軽に、一瞬の隙をついて腰から抜いたレーザーソードでその銃を薙ぎ払う。

 そして、

「賢すぎる女は嫌われるぞ!」

 そう言って彼女の脇腹にレーザーソードを突き刺したのだ。

「あうう……」

 ミコナス准尉は脆くも前から崩れ落ちた。ミコナスはうんともすんとも声を上げない。

 その様子を窺っていた他のオペレーター達は慌てて憲兵を呼んだ。すると、

「貴様ら、何を血迷ったか!? ここは俺の独壇場だ。それを邪魔するなどと!!」

 そう言って剣崎は、大柄な体躯をぐるりと転回させ、駆け付けた憲兵どもをどんどん突き飛ばして足早に艦橋ブリッジから去って行った。

「大丈夫ですか、ミコナス准尉!? 誰か、早く衛生兵と呼べ!! それとタンカだ!! 早くしろ!!」

 オペレーター主管のエリック・コドノフ少尉が直ちに駆けつけて声を張り上げる。

 艦橋内は騒然となった。余りに一瞬の出来事に、誰もが剣崎に対して対処が出来なかった。

 憲兵たちはこぞって剣崎の跡を追ったが、剣崎の行方は誰もつかめていない。

「そ、そんな……。あの剣崎大佐が、凶獣の手先だったなんて……」

 彼らは一様に驚愕の表情でそんな言葉ばかりを発した。

 この逼迫した状況で、彼らは頼りにしていた指揮官の変貌に度肝を抜かれた状態だった。



 

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