浮遊戦艦の中で229
その頃、フーリンシア大尉は人工知能〝火之神〟に不安要素プログラム注入作業の真っ最中だった。
「もう少しで、私たちの創った火之神に新しい力が宿る……」
彼女はそう言って目を爛々と輝かせ、進捗を示すモニター画面に釘付けになっていた。
そこに、
「大尉、大変です! 大佐が、剣崎大佐が
彼女の部下である技術班の一人が、慌ただしい様子で人工知能室に飛び込んできたのだ。
「何ですって!? 剣崎大佐が、まさか……!?」
彼女は目を見開いて作業モニターの側を離れると、
「それで、大佐はどこへ行ったのです!? 大佐は!?」
フーリンシアは、部下の白衣の襟を強く掴み、すごい剣幕で部下に詰め寄る。
「え、ええ……。それが、憲兵を中心にしたチームがどこをどう探しても見つからないらしいのです。どうやら剣崎大佐は、凶獣らの遺伝子に取り込まれていた模様で、艦橋から飛び出して行く前に軍服の裾から凶獣特有の羽根をのぞかせていたようです」
「何ですって!? 大佐が凶獣に……!?」
フーリンシアは、さらに驚いた様子で口をあんぐりさせた。
「大尉! もしかすると剣崎大佐のあのお強さは、凶獣由来のものだったのかもしれませんよ。何せ我々の創った火之神をあんなに一蹴してしまうほどの凄まじい身体能力も有していました……」
「ふざけたことを言わないで下さい! 火之神が劣っていたのは事実です。それと大佐の理由を混同させないで下さい!!」
フーリンシアは、掴んでいた部下の襟を無造作に放つと、モニター画面に向かってしかめっ面になり、親指の爪を思い切り噛んだ。
(どういうこと……!? あの剣崎大佐が凶獣の手先だったなんて……)
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