浮遊戦艦の中で151


 言うや、シャルロッテのレーザーソードがうなる。二本の光の筋が交互にマリダの胸元を襲うが、

「甘い、甘いわよ!! そのような駄々をこねる子供のように稚拙な腕前で!!」

 マリダは、矢のような勢いで後方に宙返りを繰り返すと、

「シャルロッテ、あなたは全てが隙だらけだわ!!」

 デッキに手をついた瞬間、弓のようにしなる右足でシャルロッテのレーザーソードの柄の部分を天高く蹴り上げる。

「はうっ……!!」

 シャルロッテはバランスを崩し、ヘルマンズ・ワイスⅤ型のデッキの上部から転げ落ちようとするが、

「なんの!!」

 彼女は、まるで跳ね虫のように軽やかなステップで甲板の側面を蹴り上げ、瞬く間に天高く跳躍し、

「お覚悟!! 姉上様!!」

 そう叫び声を上げて天上からレーザーソードを振り下ろして来る。

 がしかし、

「まさか、その程度で!!」

 刹那マリダは上空を見上げると余裕の笑みで電磁サーベルを横向きに構え、

「えいっ!!」

 力任せに振り下ろして来る光のやいばの輝きをしっかりと受け止めたのであった。

「な、なぜっ……なぜ、私の剣が当たらないの!?」

 動揺を隠し切れぬシャルロッテに対し、

「剣が当たらないのではないわ! あなたの攻撃には私欲しか感じられない! だから、わたくしには予測がしやすい!」

 言い切ってマリダは同じ体制のまま、今度は左足を天高く振り出して、

と……正太郎様と剣を交えれば、このわたくしとてこうは行きません」

「あのお方!? ショウタロウさまですって……!? まさか、姉上様の思い人というのは、ヴェルデムンドの背骨折りのこと……!?」

「その通りです! あのお方の剣は、いつも他者の為にあります! いえ、他者というよりも、人類の行く末の為にあります! そなたのような、私利私欲にまみれた関係を保つためだけの力ではありません!」


 

 

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