浮遊戦艦の中で150


「いいえ、私は逃げません! すべてはリゲルデ様のために!!」

 言うやシャルロッテは、半壊したシグマ・ウェルデから一気に飛び出すと、二丁のレーザーソードを両腕に振るってマリダ機に飛びかかる。

 およそ二十メートルもあろうかというその機体との間合いを、彼女は一歩、二歩、三歩と軽々と跳躍を経て疾風の如くクイーンオウルⅡ型改のハッチの上に到達した。

「こんな物、今すぐ剥がして差し上げます!! 姉上様、ここから出て来て、いざ尋常に勝負!!」

 シャルロッテは、二丁のソードを返す返す狂ったように叩きつけた。まさにクイーンオウルⅡ型改のハッチはひと際頑強であるものの、レーザー出力による激しい打撃の連続に、とうとう赤熱して剥がれ落ちてしまう。

 しかし、マリダもるものであり、ハッチの扉が剥がれ落ちた瞬間に跳ね馬の如くそこから飛び出し、構えるシャルロッテに電磁サーベルで襲い掛かる。

「良い機会です、シャルロッテ!! あなたはもうアンドロイドの本文を忘れてしまいました。普段、わたくしは戦いを望まないのですが、これは仕方ありません! 制裁をもって工場のスクラップ置き場に帰って頂きます!!」

「マリダ姉様! 何を仰るのかと思えば、ご自分が必ず勝つとお思いですか!? それだから、リゲルデ様に傲慢だとののしられるのです!! スクラップ置き場に帰るのは、マリダ姉様!! あなたの方です!!」

 互いの剣と剣とがぶつかり重なり合うと、大森林の中にこれでもかと言うぐらいの激しい閃光が立ち上がった。

「アマンダ、よせ!! すぐそこから逃げろ!! その魔女は危険だ!! まともにやり合って勝てる相手ではない!!」

 リゲルデが、シャルロッテの中枢思考の無線回線に直接話し掛けるが、

「いいえ、リゲルデ様。これはアンドロイドたる私の決着なのです! それもリゲルデ様との愛を貫くため!!」

「まだ、そのような戯言を……!!」

「戯言でも妄想でも構いません。私は、決心したのです。たとえ母からのそしりを受けようとも、あなた様にご満足いただけるのであれば、私は反逆の色に染まる覚悟が御座います!!」


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