浮遊戦艦の中で149


 しかし、首元をつらぬかれてもシャルロッテは退かなかった。いや、退かないどころか、それにも増して彼女は熱くなり、

「姉上様……。私のは下品などではありません。私のは悪意による義務などではありません……」

 ぶつくさと呪文を唱えるような言い様で顔をしかめるや、

「私の愛は、リゲルデ様のために永遠を貫くのです!!」

 突然、絶叫にも似た大声で叫び出し、長槍が突き刺さったままにスラスターを全開にさせる。

「そのような従属に過ぎぬ関係を、気安く愛などと!!」

 しかし、マリダは気合一閃! 突き出して来たシグマブレードの切っ先を両手で挟んで受け止め、それを一気にねじ込んで見せる。

 大剣をねじ込まれた勢いでシャルロッテの機体は回転を余儀なくされ、ヘルマンズ・ワイスⅤ型のデッキ上に激しく叩きつけられた。

「姉上様に、この思いの何が分かると言うのですか!?」

「シャルロッテ、いい加減に目を覚ましなさい!! あなたの行為は、ただその男に良いように操られているだけです!! 経験の少ないあなたは、その男の手玉にされているだけなのです!!」

 周囲は、次第に激しい戦火の渦に飲み込まれ始めていた。闇夜にむせぶ大森林の所々に、おびただしい数の閃光の嵐が点いては消え、点いては燃え広がって森の中を席巻している。

 今は亡きサガウルが連れ立った親衛隊一番隊と、リゲルデの討伐部隊先鋒隊とが正面から怒涛の如くぶつかり合う。

 数で勝る討伐先鋒隊であったが、複雑な状況を持つ彼らに士気高揚などという言葉は存在しない。ただ恐怖の支配による焦燥と絶望とが彼らを煽り立てるだけで、操縦技術と戦略に勝る親衛隊の敵ではなかった。

 しかし、絶対的な指揮官を失った親衛隊も今一つ統率力が取れずに苦戦を強いられている。

 マリダの放つ〝第二者侵入プログラム〟から防御するため、リゲルデは三次元ネットワークを使用することが出来ず、全ては旧戦略方式の無線でのやり取りでしか統率できない。

「アマンダよ、お前はそこから逃げるのだ!! さすがに今のお前では、そのを討つことは出来ん!!」



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