浮遊戦艦の中で148


「騙されてなどおりません!! 姉上様には、これぞというお方が居ないからそう仰られるのです!!」

 相反し、今度はシャルロッテ機の剣先がマリダ機の腕をかすめた。かすめた腕のアームドカバーに亀裂が入り、そこから微量のラジエーターオイルが漏れ出して来る。

 しかし、

「そんなことなど御座いません! このわたくしにも、これと決めた方なら存在します!」

 ここでやられてマリダも黙ってはいない。彼女はソニック・ガ・ジャルグを柄の中心部分に持ち直し、それを目にも止まらぬ八の字を描いた回旋で剣先を薙ぎ払うと、

「ただ、に見えている物が、このわたくしだけではないということです!! はそういうお方なのです!!」

 言い切った瞬間、槍の石突の部分がシグマ・ウェルデの肩のアーマー部分をつらぬいた。貫かれたアーマーは後方へと砕け散り、その破片がヘルマンズ・ワイスⅤ型の甲板上に転がって所々に小さな穴を開けてゆく。

「姉上様は、そういう鬱積を溜め込んで!! それだから下々の心など理解出来やしない!!」

 マリダの長槍が空に弧を描いた時、シャルロッテは機体を半回転させ、そのままの回転力を利用しブレードを横に一閃、

「マリダ姉様のは、まだ空回りなのです!!」

 シャルロッテの放つ切っ先がクイーンオウルⅡ型改の胸元を切り裂き、搭乗するマリダの姿があらわになる。

「シャルロッテ、本当に生意気です!! そのように、まるで見て来たようなことを言って!!」

 シャルロッテの放ったブレードの切っ先が振り終えた隙に、今度はマリダの長槍の切っ先がシグマ・ウェルデの胸元を捉え、

「男の価値を見定めることも出来ないあなたには、これは到底理解出来ないことなのです!!」

 超振動を伴った激しい一撃が機体の首元に突き刺さった。




 

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