浮遊戦艦の中で144


 言うや、シャルロッテは途端に無表情になり、狙いをクイーンオウルⅡ型改のコックピットに定めた。すると、

「あなたは間違っています、アマンダ・シャルロッテ中尉!!」

 三次元ネットワークを通じて、マリダの声がシャルロッテの中枢思考回路に流れて来る。

「こ、これは、元女王……そう、マリダ姉様の声!?」

「シャルロッテ、シャルロッテ中尉!! あなたは完全に間違っています! ここでアンドロイドの在り方を見失ってはいけません!!」

「間違って? 見失っている? この私が……?」

「ええ、そうです。そのような粗暴で野蛮な個人の感情のみで動いてはいけないと申しているのです!! あなたはアンドロイドの誇りである主従の力を取り違えています!! そのような下品な感情で動こうとする行為を、母クラルイン博士は望んでなどおりません!!」

「で、ですが姉上様……。私は、もうリゲルデ様無しにはいられません。物を考えられないのです。逆にお伺い致しますが、姉上様には、この世に自分の愛を捧げられる大切なお方がおられないのでしょうか!?」

「シャルロッテ!! そのような下品な考え方では、ただ漫然と流されて行くだけです!!」

「下品? 私の愛を下品と申されましたか、姉上様!? で、ですが……それでも今の私の思考回路はとても充足しております。底知れなく温かい遣り甲斐で満たされております。この掛け替えのない充足の心を失わぬ為に、私は母の使命に背いてでもというもので全てを満たしたいのです!! たとえどのようなことがあっても!! たとえ姉上様を討ち果たしてでさえも!!」 

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