浮遊戦艦の中で143


 リゲルデの恨めしげな雄叫びが森一帯に響いた時、ヘルマンズ・ワイスⅤ型の後方にあるハッチから一つの影がせり出して来る。最新鋭機〝シグマ・ウェルデ〟である。

「シャルロッテ中尉、これがお前の予測した通りの結果だ! お前のお陰で元女王は我らの手の中にある。よって、ここに見事元女王を討ち果たして見せるのだ!!」

 リゲルデの圧倒的な興奮とともに、シャルロッテ中尉の搭乗するシグマ・ウェルデの超振動式大剣〝シグマブレード〟の切っ先が、マリダ機のコックピットを捉える。

 シャルロッテはシグマブレードを無双の位置に構えた。一思いにクイーンオウルⅡ型改のコックピットを突き刺す算段である。

 だが、

「どうした、シャルロッテ中尉!? どうして一思いに討たぬ!? 今ここでその切っ先を突き刺せば、我らの目的は一気に果たせるのだ!! さあ、どうしたのだ、その刃を思いのたけ打ち込むのだ!!」

 シャルロッテは、その刃を突き上げようとはしない。

「何を怖気づいているのだ、アマンダ!? アンドロイドであるお前の使命は、この俺への貢献であると先ほども言ったはずだ!!」

 リゲルデの強制的な声が大森林を駆け抜ける。

「で、ですが中佐……。私は元来、人類貢献のために生まれ出てきたアンドロイドであり、は、人類貢献のために作られし重要なアンドロイドであり……」

「何をたわけたことを!! 今さらそのような禅問答をここで交わしている場合か!? お前はこの俺に忠実であれば良い! 一生この俺の為だけに、な!!」

「……分かりました、中佐。私は、あなたの為に戦います。どこまでも愛おしい私のリゲルデ様のため……」

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