浮遊戦艦の中で145


 これを衝動的と言うべきか、それとも決意と言うべきか。今のシャルロッテにはためらいが無かった。刹那、手にしたシグマブレードを大上段に振り上げるや、それを雁字搦めに捕らえられたマリダの機体の頭頂部へと振り下ろしたのである。

 するとその時――

「陛下――!!」

 閃光の如き速さで一台のフェイズウォーカーが、彼女らの間をさえぎったのである。 

「さ、サガウル殿!!」

 なんと割って入ったのは、女王親衛隊長サガウル専用機体〝クイーンオウル高機動〟であった。

「陛下……、遅くなり申しました。このサガウル……一生の不覚を取るところでした……」

「で、ですが……サガウル殿」

 サガウルの機体の背部が、シャルロッテの凶刃によってざっくりと切られている。当然、その刃は搭乗者であるサガウルの背中の部分にも到達し、噴き出した血によって全身が赤まみれである。

「これで良いのです……陛下。私は……そのために……」

 サガウルは、その言葉を言い切らずに絶命した。実に呆気ない最後である。

「あ、あああ……。シャ、シャルロッテ!! あなたという人は!!」

 親衛隊長サガウルの壮絶な死を目の当たりにしたマリダは、絶叫と共に表情をゆがめた。そして、

「許しません……。私欲に走ったあなたを、わたくしは絶対に許しません!! 母を同じくして生まれ出て来たアンドロイドとして!!」

 言うやマリダは、意識をもう一つある禁断の回路に接続した。彼女だけに備えられた、〝統治者制限プログラムの解除装置〟である。

 これは、クラルイン博士が稀代の善良な統治者となるべくマリダにだけ取り付けた装置である。がしかし、その解除はクラルイン博士の意向により、自身の任意によって解除出来るようになっている。

「わたくしは絶対に許しません!!」


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