浮遊戦艦の中で136
森を三十秒も走らせたときには、マリダの機体は数十機の光の列に取り囲まれていた。
敵も時速二百五十キロメートル以上を出しながらの相手には、そうそう手を出し難い。否、この漆黒の闇の中で、剣山のように立ち並ぶ巨木の間を自由気ままにすり抜けられる腕を持ったパイロットなど居るものではない。
(討伐隊の先行部隊の方々は、この機体がわたくし専用の物であることに気づいてくれたようですね。それならば……)
マリダは、そこで次第にスピードを緩め、一般戦闘速度を保った。
敵の部隊は呆気にとられていた。マリダの機体を取り囲んではみたものの、誰も手を出そうとはしない。
武器類はロックオンし、攻撃の対象となっている。が、それでも誰も弾頭を射出する様子が無い。
それもそのはずである。なにせ、女王専用機体であるクイーンオウルⅡ型改が単体で敵部隊の真ん前に現れ、ご丁寧にも自機の識別信号を送って来たのだ。これをして、一種異様に不気味に思わぬ者が居ないわけがない。
敵方の予測たるや、
「もしやすれば、あの機体を撃てば、たちまちこの辺り一帯を火の海にするぐらいの爆発を起こす算段なのだろうか……?」
「いや、もしやすれば、あの女王の機体は
「いやいや、大体、女王一人でこんな場所にのこのこやって来る自体が常軌を逸している。どういつもりなんだ、一体……!?」
このような憶測が猜疑心を生み、どうにも手出しが出来ないでいるのだ。
これもマリダの作戦の内であった。彼女は、巧みに相手の心理を読み、自分の掌の中で掃討部隊を手玉にしている。
彼女はここぞとばかりに、敵の機動兵器部隊に強制回線を送り込んだ。
「掃討部隊の皆様、わたくしはマリダ・ミル・クラルインです。あなた方が標的にしている
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