浮遊戦艦の中で134


 その時、サガウルの脳裏に、ある一つの予測がよぎった。

「ま、まさか!? 陛下は!?」

 そう、あのひと際心優しい陛下ならあり得る。いや、それしかない。マリダ女王陛下は、我々などよりも、もっと先を読んでおられたのだ――

 さすがは親衛隊の長まで上り詰めた実力者のサガウルである。この一瞬で全ての状況を把握し、先々の行動を予測した。

「マリダ陛下は。誰も見捨ててはおらなんだ。誰も敵に回したくないのだ。なぜなら、我らの女王陛下は生まれながらにしてのアンドロイドであり、そのアンドロイドとは、全人類貢献のために造られし存在であるからだ!!」

 そこでサガウルの予測は確信に変わった。。そして、さらなる焦燥を生み出す。

「み、皆の者、良く聞け! もしやすると陛下はお一人で無茶な行動を起こすやも知れん! 急げ、急ぐのだ!! 手遅れにならんうちにな!!」

 渦中雪月花の陣を取りながらの行軍は、かなりの至難の業である。それでもサガウルら親衛隊は先を急がねばならなかった。

 なぜなら、女王自らが出撃し、そして先を急ぐ理由はただ一つだからである。

「へ、陛下は、を救おうというお考えなのだ!! 急げ!! 陛下をお一人にさせるのは危険だ!! これでは我ら親衛隊の名折れになる!! 皆の者、急げ、急ぐのだ!!」



 マリダは一心不乱に先に進んだ。誰も追いつけないように。誰にも邪魔をされないように。

(今頃は、サガウル殿も焦燥に焦燥を重ねて身を焦がす思いをされているのでしょうね。確かにそれは申し訳ない事だと思います。ですが、このままではあの方たちが……)





 

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