浮遊戦艦の中で86


 ※※※


 正太郎が、自らの不甲斐なさを嫌悪していると、

幼気いたいけな動物をいじめるな!!」

「野蛮な動物虐待主義者は、ヴェルデムンドへ帰れ!!」

「お前は、人の心を持っていないのか!?」

 何と、その街の前を沢山の横断幕を持って野次を飛ばす人々が列をなして現れたのだ。

「な、何だと……!? まさか……」

 正太郎は唖然とし、巨大子猫の頭の上からそれらの連中の姿を見やった。

「野蛮な世界で、野蛮な行動を起こしてきた羽間正太郎!! お前は、そのように幼気で可愛げのある猫ちゃんを虐待するのか!? お前は人間の心を持っていないのか!?」

 横断幕を掲げた人々の群れの中でも、拡声器を使用し、いかにも角の立つ言い様で人々を煽り立てる男が居た。その男は、オレンジ色のヘルメットに迷彩柄の防弾チョッキを着たサラリーマン風のいでたちである。

「何だ……。何なんだ、こりゃ……?」

 呆然と見下ろす正太郎をよそに、

「お前のような、野蛮極まりない男を野放しにするわけには行かない。我々は、断じてお前の粗暴な態度を許さない!! 我らの街に、羽間正太郎。お前が居るということは、野生の虎を野放しにすることと同じなのだ!! 理性ある我々の街に、野生の虎は要らない!! 野生の虎はあの世界に帰れ!!」

「野生の虎は帰れ!!」

「野蛮な生き物は帰れ!!」

「二度と同じ過ちを繰り返すな!!」

 集団は一様に拳を振り上げ、怒号にも似た大声を張り上げて正太郎を威嚇する。

「何言っていやがるんだ、コイツら……。今、俺がどうのこうのとか言ってる問題か……?」



 

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